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目の前の景色が急に変わった気がして、慌てて回りを見回す。
「ハニーちゃん?」
「うん。」
「どうしたの?」
「うん。」
「あれ!?のぼせた?」
慌てた様子で覗き込む禅の顔をマジマジと見つめて
蜜はプッと吹き出した。
「お医者さんみたい。私、禅ちゃんに良く似たお医者さんを知ってるの。」
「そのお医者さんは何だって?」
「何にも言わなかった。そうだ、本当に何にも言わなかったんだ!」
蜜は思い出したように呟く。
それを見ていた禅はいつの間にか開けていた蜜のコーラを飲みながら、きっとそれは母親の事だと確信していた。
あの人はそういう人だ。
飄々としていて、何にでも『あら、いいんじゃない?』なんて言う人だ。
何かを押し付けられた記憶もない。
「あ!でももう一人の先生は言ってたな。」
「何て?」
「私にナイショで男と寝るな、って」
ブフォッ!
蜜の言葉が終わる前に禅は口にしていたコーラを豪快に吹き出した。
「うわっ!ちょっと何!?キッタナイ!」
蜜の胸元はコーラまみれになっていた。
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