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いい話って!
そりゃあ良い話だけど!
やっぱりこんなに簡単に合鍵を貰うってどうなのよ?
禅の思惑を推測しながら視線を向ければ、鼻歌を歌いながら明らかにご機嫌な様子。
こんなもの貰ったら後には引けないし・・・
でも突っぱねる勇気がナイ・・・
それはここがとても居心地の良い空間になってしまったから。
それに・・・
何よりもっと一緒にいたいと思ってしまったから。
スキという気持ちを自分で肯定してしまった今、誰かにブレーキをかけて貰わないと自分で自分の気持ちはセーブできない。
困ったな。どうしよう?
またグルグル考えている様子の蜜を禅はしばらく気付かないふりをしながら観察していたが、いつまでたっても答が出そうもない気配がプンプンしている。
「もう時間切れ!」
そう言うと蜜が顔を上げたのと同時にひょいと抱き上げて膝に乗せた。
「ええっ!?」
「考えるなって言っただろ?」
禅はむくれたようにそう言ってむぎゅっと蜜を抱き締めた。
「ちょっと禅ちゃん!なんでいつもこの格好?」
確かに禅はぎゅうぎゅう抱き締めてばかりだ。
いくら女とは言え、大人の人間をいとも簡単に持ち上げる。
そして気付いた時には膝を跨がされ抱き締められているのだ。
なんか・・・良く考えたらこの格好結構エロいし。。。
こんな体勢だから油断しちゃうんだよなぁ。
「とにかく離してよ。この体勢じゃまともに話出来ない。」
「やだ。」
「子供か!」
「何とでも言っていいよ。だけど離すつもりはナイから。」
「なんで?」
「すっぽり腕に収まって柔らかくて抜群に抱き心地がいいから。それに俺寂しがり屋さんだから。」
やけに堂々と言うので何と反論して良いかわからない。
そう言えば禅との会話はいつもそう。
命令されてる訳でも強制されてる訳でもないのに嫌と言えない。
まぁ、理由はそれだけじゃないことは薄々感づいてる。
離して、なんて言いながらも嫌じゃないって思ってるから。
ぎゅうっと抱き締められるその腕はとても安心出来て癒されているのは私の方だから。
あぁ、思い出した。
私って、物凄く甘えたなんだった・・・
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