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それは間違いなく生い立ちのせいだ。
両親はそれほど私を甘やかしてはいなかったけど、兄と弟は私を溺愛していた。
兄も弟も父に似て優れた容姿に高い身長。
兄はバスケ部で主将を務めながら生徒会長でもあったし、目立つ事を嫌う弟は表舞台にこそ立たなかったが、やはり教師にさえ一目置かれるような存在だった。
そんな二人は何よりも私の事を優先し、どんな事からも守ってくれた。
堂々とシスコンを認めていたし、おおっぴらに可愛い可愛いと私を褒め称えた。
そのおかげで恋愛の経験はゼロに等しいし、籠の中育ちで打たれ弱い。
やっと一人で飛び立った異国の地で傷つき打ちのめされた。
絶対的な味方がいる。
それはとても幸福な事だと思う。
しかし守られている事で鈍った感覚は時に恐ろしい欠点となりうると、身をもって痛感した。
だからあれからずっと誰かに頼ることが、甘えることが怖くなっていた。
それが家族であっても、親友であっても。
尚や勘には随分助けられたけれど、自分から頼ることは出来なかった。
それなのに禅はいとも簡単に甘えたな自分に戻してしまった。
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