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蜜はあの人を思い出していた。
愛はお腹を満たしてはくれないと言ったあの人を。
何もかも奪われた自分に尚裁判を突き付け損害賠償というかたちでお金を取ろうとしたあの人の母親を。
呼吸が浅く、早くなるのが分かる。
このままでは過呼吸になる。
意識して深く息を吸う。
目の前がグラリと歪む。
脳が揺さぶられている気がして慌てて目を瞑る。
耳の奥で声がする。
最後に叫んだ自分の声。
『No!』
だめだ、自制できない。
流される!
そう想ったときだった。
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