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「私、イングリッシュガーデンに憧れてイギリスに留学してたの。」 突然蜜がポツリそう言った。 蜜は体を禅に預け、後ろから抱き締めている禅の手にそっと手を重ねる。 「イギリスの田舎で、怖いおじいちゃんにガーデニングを習ってた。ガーデニングっていうより本当庭仕事。スッゴク大変で、でもスッゴクたのしかった。」 「知らなかったな。留学してたんだ。」 「日本にいたら、お兄ちゃんたちに守られて何にもできなくなっちゃうと思って。思いきって飛び出して、何もかも新鮮で。きっと勘違いしてたんだと思う。自分が凄く輝いた人になったような気がしてた。」 初めはただの昔話だと思っていた。 話題を変えるだけのつもりかと。 しかし禅の指をそっとなで続ける蜜の指先はずっと冷たいままで。 振り返らない蜜の表情が急に気になった。 「ハニーちゃん?こっち向いて?」 蜜は小さく首を横に振った。 「ジョン、おじいちゃん先生ね?ジョンに連れて行かれた広いお屋敷の庭で、彼と出会ったの。」 「ハニーちゃん、やめよう?いいから。本当に。」 振り向かせようと抱き締めていた手をほどくと、その手は蜜によって元の位置に戻されてしまう。 「ハニーちゃん!」 「今しか話せない。今じゃなきゃ話せないの。」 決意を秘めた蜜の言葉。 きっと蜜がそう言うのだからそうなのだろう。 今しか話せない。 きっとツラいに決まってる。 表情は見えないけれど、今にも泣き出しそうな顔が目に浮かぶ。 「ハニーちゃん、もう一度だけ言うよ?無理に話すことはない。俺は過去にどんなことがあったとしてもハニーちゃんを愛するし、いつか絶対そんなこと忘れさせてあげる自信がある。それでも話す?」 蜜はぎゅっと禅の手を抱き締めるように握るとゆっくり頷いた。
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