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気丈に話し続ける蜜を抱き締めながらどうしようもない後悔の念に苛まれた。
事実がどうであろうと、彼女を愛する気持ちが変わるわけではないのに。
彼女との隙間を少しでも縮めたいばかりにこんな状況を作り出してしまった。
どうだってよかったのに。
どんなことがあろうと彼女を手放す気などないくせに。
思い出さなくて良いことをおもいだだせて苦しめている。
「ハニーちゃん、もうわかったから。」
尚も話し続ける蜜の口を自分の唇で塞いだ。
「ンンっ!」
それしか思い浮かばなかった。
蜜は突然のキスに驚きながらも禅に身を委ねた。
そして唇が離れるとじっと禅を見つめ、そして笑った。
「なんだかスッキリしちゃった。」
「ハニーちゃん・・・」
「ごめんね?何か、イキナリ。」
そう言った蜜は笑っていた。
無理をして笑っている訳でもなく、本当の笑顔で。
「ハニーちゃん、やっぱり明日病院行こう?」
「何で?必要ないよ。」
キッパリそう言い切った蜜はまだ笑みをたたえたままだった。
「禅ちゃん、シたいなら・・・良いよ?しよ?」
蜜はまだ微笑みを浮かべたままだった。
まるで何かを吹っ切ったように、力強い瞳で、静かに微笑んでいた。
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