5

55/194
前へ
/1073ページ
次へ
つい本気で眠ってしまっていた。 目を開けて目を凝らすと時計の針は4時を指していた。 心地よい重みは禅の腕。 しっかりと抱き締めてくれているその腕にいとおしさを覚える。 禅はいつも抱き締めてくれた。 時にはふざけて、時には強引に。 そしてどんな時もその腕には愛が隠っていた。 だから離したくはなかった。 本当は、離したくなかった。 「ありがとう。大好きだよ。」 そっと囁いて、ゆっくり禅の腕を退ける。 禅を起こさないように注意を払いながら寝室のドアに手をかける。 そして振り返らずに寝室を後にした。 全てを話してしまった後、妙にスッキリした気持ちになって、驚くと同時に禅の大きさに気が付いた。 禅の包容力がそうさせてくれたのだと。 だから決断した。 禅を解放しよう。
/1073ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15840人が本棚に入れています
本棚に追加