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蜜はバックから貰ったばかりの合鍵を出すとキッチンカウンターにそっと置いた。
そしてそのまま部屋を出ていくつもりだった。
でも、振り返らずにはいられなかった。
もう一度目に焼き付けておきたい、その気持ちを押さえられなかった。
一度だけ、そう心に誓って振り返ると、さっき鍵を置いたキッチンカウンターに禅が腕組をしながら寄りかかっていた。
「禅ちゃん・・・ごめん、起こしちゃった?」
「いや、大丈夫。それより、まだ病院開いてないよ?」
そう言う禅はいつの間にか直ぐ近くまで来ていて、あっと言う間に捕まってしまった。
「離さないよ。絶対に。逃げたって無駄だよ?世界中どこまでだって追いかける。どんなことしてでも、どんなに時間がかかっても。だから諦めてよ?ずっとここにいてよ?」
捕まれた腕は引き寄せられ、蜜の体は禅の腕の中に収まってしまっていた。
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