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「禅ちゃん・・・」
「離さないよ。絶対に。」
「でも・・・」
抱きすくめられた体は動かなかった。
まるでそこが定位置だというように。
禅ちゃんを解放してあげなきゃ・・・
頭ではわかっているのに、その腕を振りほどけない。
どうしたらいいの?
頭と体が矛盾してる。
今すぐここを立ち去るべきだと分かっていても、一向に動こうとしない体。
本当にどうしたら・・・
「俺といるのが辛い?」
静かに降ってきた禅の言葉に、思わず首を振りそうになる。
決めたじゃない。
禅ちゃんを解放するって。
幸せになってもらいたいって思ってるんでしょう?
自問自答を繰り返してやっと少し落ち着いた。
そう。これが禅ちゃんの優しさ。
分かってたはずなのに。
禅ちゃんならきっとこうするって。
すっかり禅に甘えることに慣れてしまった。
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