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ずっと考えないようにしていたことだった。
失ったものはもう戻らないのだから。
でもそうやって逃げていただけかもしれない。
確かにあの時は妊娠を喜んだ。
そして失った時は言い様のない喪失感で一杯だった。
でも・・・
失った子供に対して、申し訳ないという思いだけが先行してそれ以外の感情は感じる暇がなかった。
あぁ、私は元々として母親になどなれなかったのだ。
禅に問われて初めて気が付いた。
「ううん。申し訳ないとは思うけど、私は母親にはなれてなかったみたい。」
正直に打ち明けると自然と自嘲的な笑みがこぼれる。
本当に最低だ。
生まれてこなかったのはあの子にとってかえって良かったのかもしれない。
子供が産めない体になって、無い物ねだりしていただけ。
あの子に愛情の欠片さえ与えていなかったことに、やっと今気付くなんて・・・
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