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外来へ戻るとさっき別れた待合の椅子に座っている蜜がいた。
「ごめん、待った?」
「あ、ううん。」
蜜は顔をあげてそう答えると立ち上がった。
「行こうか?」
「うん。」
禅に手を引かれて会計カウンターへ。
診察室で貰ったファイルを出そうとすると横から伸びてきた禅の手にひょいっと奪われる。
「え?ここじゃないの?」
「うん。ハニーちゃん保険証出して?」
言われるがままに保険証を出すと禅は蜜に少し待つように言ってカウンター横の扉の中へ入って行ってしまった。
「ええっ!?」
なんの迷いもなく行ってしまった禅に唖然とする。
そして頭の片隅で燻っていた疑問が確信に変わっていく。
禅は保険証だけ持って直ぐに出てきた。
「これありがとう。じゃあ行こうか?」
「会計は?」
「ああ、大丈夫。」
禅はまた平然と大丈夫とだけ言うと、蜜の手をとって歩き出した。
「まだメシには早いよな。どうしようか?どっか行きたい所ある?」
「特にはないけど・・・」
車に乗り込みながら、いつこの疑問をぶつけようかと禅を盗み見る。
禅はそんな蜜の視線は気にもせず、助手席のドアを閉めると機嫌良く自らも車に乗り込んだ。
「どうしようかな。」
エンジンをかけながら呟くように言う禅に蜜は言った。
「この辺詳しいの?」
「まぁね。昔働いてたって言わなかったっけ?」
「聞いた。って言うか実家でしょ?ココ?」
真っ直ぐ病院を指差すと、笑顔だった禅が一瞬真顔を覗かせた。
「え?」
「だから、ここ。実家でしょ?若先生?」
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