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「取り合えず入ろう。」 禅に担がれてグッタリしていた蜜はその言葉にガバッと顔を上げた。 「いや、それは無理!」 「え?何が?」 「このタイミングで上がり込むのはマズイって。」 だって今はみんな出払っているようだけど、帰って来ちゃったらどうするのよ? バラの為とは言え随分バッサリやっちゃったし。 服はドロドロだし。 第一、なんて説明するのよ? 友達? 彼女? でもどっちでもない場合は? まさか『友達以上恋人未満の平間です。』と挨拶しろってか!? 「禅ちゃん、無理だから!」 正面は見えないけれど、担がれた状態からでもここが庭ではないことがわかる。 蜜の視界、禅の足下にはクリーム色のテラコッタタイルが広がっている。 「何言ってんの。そんなこと気にしてる場合じゃないでしょ?」 禅がそう言った瞬間、がチャリと音をたてて玄関の扉が開いた。 「ちょ!禅!待って、ああっ!」 スルッと履いていた靴を脱がされる。 そして禅は無言のまま階段を登り始めた。 「どこ行くのよ!」 「俺の部屋。横になった方が良いから。」 「いや、本当に、そんな寛ぐとかしないしっ!」 下ろして!と言えないのが何とも辛い所だ。 ようやくまともに血が通い出した膝から下と手首から先はビリビリが半端なく、腰はまだ痛い。 今下ろされたら多分廊下でうずくまったまま身動きが出来ないだろう。
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