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そこに立っていたのは入院中のはずの姉、芹澤美和(セリザワ ミワ)だった。
「産まれるまでいるんじゃなかったのかよ?」
「もう37週に入ったし、推定体重も2500g超えてるから良いのよ。」
「また勝手言って出てきたんだろ?」
「失礼ね!私は産婦人科医よ?私が大丈夫って言ったら大丈夫なのよ!」
姉はそう言って禅を押し退けた。
目線は部屋の奥、ベッドに釘付けだ。
「ちょっと来なさい!」
海人を抱えたままの禅を引っ張って部屋の外へ出るとパタンとドアを閉じる。
「海人、パパに言ってハニーちゃんのお茶とお菓子を用意してもらいなさい。」
「いいよ!義兄さんにそんな。」
「うるさい。」
海人が喜んで階下へ降りて行くのを見届けると姉は大きなおなかの上で腕を組んで禅を睨み付けた。
「あれほど言ったでしょ!許可するまでヤるなって!」
何かと思えばその話か。
禅は再び大きく溜め息を吐いた。
「やってねぇよ。」
「じゃあ何でベッドにいるのよ!?」
「腰を痛めて休んでるんだよっ!」
「腰を痛めるほどヤってたの!?あれほどがっつくなって行ったのに!」
「だから!やってねぇって言ってんだろうが!誰が好き好んでわざわざ実家に戻って来てやるんだよ!やるなら自分の家でやるわ!」
全く話を聞いていない姉に呆れて、知らず知らずのうちに大きな声になる。
「それもそうね。」
アッサリ認めた姉に三度溜め息を漏らすと、部屋のドアがかチャリと遠慮がちに開いた。
二人で目を向けると、思いきり目を泳がせながらペコリと頭を下げる蜜がいた。
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