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大地が何か言う前に勘は尚のもとへ歩き出していた。
尚は黙って禅たちを見つめているようだった。
「尚?」
尚は振り返らず小さな声で問う。
「大丈夫かな…何だか展開が早くて心配。」
「大丈夫だろ。アイツ、どうやら本気みたいだ。」
勘はそう言うと後ろから尚をそっと抱きしめた。
「ほんとに?」
それでも心配そうに小声で問う尚の頭に勘は顎を乗せた。
禅のプライベートの事は敢えて言うつもりはなかったが、あまりにも心配そうな尚を見かねて言葉少なに語った。
「蜜ちゃんにも何かあるみたいだけど、禅にも色々あってね、ここ10年近く女の子には近寄らなかったんだ。」
「どういう事?」
「んー、まぁ一言では言えないんだよなぁ。失恋…じゃないし。」
勘はしばらく考えてボソッと一言だけ言った。
「1人、置き去りにされたんだよ。」
尚はゆっくり勘の腕の中で反転すると、勘の胸に頬をうずめた。
「何があったかわからないけど…禅さんにも傷があるんだね。」
「まぁそうだな。」
「そんな2人がうまく行くのかな…」
「傷が有る無し関係ないだろ、恋愛なんて。」
「そうだけど…あの子は…もう次はないと思うから…」
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