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「ぜんにぃちゃん!」
車を飛ばして実家に着くと既に準備を済ませた海人が走り寄って来た。
「ゴメン。遅くなった。」
「パパ~!ぜんにぃちゃん来たよ~!」
禅にしがみついたまま大声で父親を呼ぶと奥から白衣姿の男が現れた。
「いつもすまないな。」
「いやこっちこそ遅くなって。義兄さんもう勤務の時間だろ?」
「これくらいなら大丈夫。レジデント君が今頃頑張ってるハズだから。」
そういうとニヤリと笑った。
この男は姉の旦那である芹澤拓人(セリザワ タクト)。
心臓血管外科医で今日は夜勤。
姉が切迫早産で入院して以来、同じく医者の両親と何とか勤務を調整しているが、どうしても都合のつかない日はこうして禅が預かる事になっていた。
「じゃあ明日の夕方また送ってくるから。」
「悪いな。宜しく頼む。
海人、禅の言うことをよく聞けよ?きちんと歯磨きしてトイレに行ってから寝るんだぞ?」
「はーい!行ってきまーす!」
海人は大きな声で返事すると、禅の手を引っ張って勢いよく玄関を飛び出した。
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