天国と地獄

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天国と地獄

   キラキラと輝く春の太陽。  ぽかぽか陽気。  隣には先輩。  こんな幸せな日曜日が、もうすぐ終わる。  正確には、あと9時間後に。 「明日からテストだね」  そう言いながら、2人で並んで買ったクレープを、パク、と小さい口に入れる姿もカッコイイ。 「うわぁ、イヤなこと思い出させないでくださいよ───…」  冗談ぽく、ちゃんと笑顔を浮かべながら答えたけど、バッチリ本心。  明日から中間テストの始まり始まり。  しかも、初日から数学、古文、物理の豪華3点セット。 「はぁ……遊んでおきながら言えたことじゃないですけど……赤点かも」  自慢じゃないけど、わたしの数学のダメっぷりは半端じゃない。小学校の時から、通信簿は5以下だったし(当然ながら10段階評価)  古文は、まるで呪文みたいで意味不明。  物理なんて、論外。 「先輩は明日、大丈夫……ですよねぇ」  まだ温かいクレープを持つ手に力が入って、中身のバナナが、にゅるりと飛び出しそうになって。  慌てて、ぱくつく。 「うーん……まぁ、なんとかなるとは思うけど」  2口、3口と続けて生クリームをすくいながら、午後の陽に髪の毛を茶色く染める先輩をじっと見つめる。  春休みに、ダメ元で告白して、まさかのオッケー。  こうやって、休みの日に会えるなんて(告っておきながら)考えてもみなかった。  もごもご バナナを噛みながら、夢じゃないのかな なんて思ってみたり。 「とりあえず、一夜漬けででも頑張るかなぁ」  なんて、にっこり微笑んだ顔に、ズキュ───ン。  わたしの心臓、見事に射抜かれちゃってます。  すぐ近くにいる人に失神しそうになるの、わたしだけなんじゃないかなって、そんな気がする。 「わたしは一夜漬け、出来ないんですよね───…」  意識してないと、ふがふが鼻息荒くなりそうだから、精一杯の理性で、何とか言葉を並べた。  頭の中は、それどころじゃないっていうのに。  
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