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君の夢
今日もまた、目が覚めた。
当たり前に鳴り響く目覚まし時計を強く叩いて、あくびを1つ。
夢を見たな、と。
ぼやけそうになる輪郭を、一生懸命、引き寄せる。
慎吾がいた。
白が基調の知らないカフェ。おしゃれなテラス。
白いテーブルに肘を突いて、真っ白のカップを手に。
あの頃のまま、笑っていた。
わたしは、慎吾のちょうど向かいに座っていて。
懐かしさなんて、全然感じてない様子で、一緒に笑っていた。
今はもう、傍にはいない。
それを、知らない。
夢の中のわたしは、慎吾に「お前なんか知らない」「どっか行っちゃえ」なんて言ってしまったことを、知らない。
慎吾は、本当にどこかへ行ってしまった。
わたしの知らないところへ、行ってしまった。
わたしの傍にはいない。
いなくなってしまってからは、どんなに懐かしんでも届かなくて。
いくら望んでも、願いは叶わなかった。
だからわたしは、夢を見る。
都合のいい夢。
ほにゃほにゃ微笑んで、わたしの頬を撫でてくれる慎吾のこと。
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