4人が本棚に入れています
本棚に追加
ままごと
私は、幸せ。
幸せだ。幸せなんだ。
言い聞かせているのは、誰でもない。私自身。
催眠術をかけるように。
頭の中、喉の奥、舌の上。
細胞の1つ1つが納得するまで、繰り返してやる。
鳴らない電話に、すっかり慣れきってしまう程。
彼の気持ちに諦めがつき始めてる――なんて、自覚しちゃいけない。
文也と一緒にいること……いられることを、幸せだ、って思わなくちゃ。
でなきゃ。
私の3年間が、無駄になってしまう。
気紛れに遊びに来る文也のために、毎日作る、1人分多い料理も。
自分じゃ飲まないくせに、いつも冷蔵庫にある缶ビールも。
決まって予定を空けてしまう、毎週土曜日の夜も。
理由を、ちゃんと持っていたい。
文也のため。だけじゃなくて。
私が、そうしたいから、と思わなくちゃ。
後で掛け直す、って言ったくせに。
もう、あと5時間で、私は1週間も待ってることになる。
文也のことを好きじゃなかったら我慢は出来ない。出来ないはず。
私は文也を好き。
だから、待ってる時間さえ、幸せ。
冷たくなったグラタンを眺めながら。
言い聞かせる。
何度だって、繰り返す。
最初のコメントを投稿しよう!