ままごと

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ままごと

   私は、幸せ。  幸せだ。幸せなんだ。  言い聞かせているのは、誰でもない。私自身。  催眠術をかけるように。  頭の中、喉の奥、舌の上。  細胞の1つ1つが納得するまで、繰り返してやる。  鳴らない電話に、すっかり慣れきってしまう程。  彼の気持ちに諦めがつき始めてる――なんて、自覚しちゃいけない。  文也と一緒にいること……いられることを、幸せだ、って思わなくちゃ。  でなきゃ。  私の3年間が、無駄になってしまう。  気紛れに遊びに来る文也のために、毎日作る、1人分多い料理も。  自分じゃ飲まないくせに、いつも冷蔵庫にある缶ビールも。  決まって予定を空けてしまう、毎週土曜日の夜も。  理由を、ちゃんと持っていたい。  文也のため。だけじゃなくて。  私が、そうしたいから、と思わなくちゃ。  後で掛け直す、って言ったくせに。  もう、あと5時間で、私は1週間も待ってることになる。  文也のことを好きじゃなかったら我慢は出来ない。出来ないはず。  私は文也を好き。  だから、待ってる時間さえ、幸せ。  冷たくなったグラタンを眺めながら。  言い聞かせる。  何度だって、繰り返す。     
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