バースディ

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バースディ

 夜、お風呂上がり。  鏡の前に座って、化粧水をたっぷり含んでひんやりとしたコットンで、ぺたぺたと肌を湿らせながら。  ふと視界に入り込んできたカレンダーの日付に。  ふう、とため息をつく。  いつの間にか。  20日になっていた。  いつもの何でもない日と同じように、ふらふらと18日を過ごしていた。  あんなに特別だと感じていた、1年に1度だけの日なのに。  今のわたしには、17日も18日も19日も。  ただの、9月の中のありふれた1日になってる。  絶対に忘れないだろうと思ってた日。  去年はぎりぎり18日には思い出していたのに。今年は、2日も過ぎていた。  来年は。  何を考えながら、9月18日を過ごすんだろう。  大好きだった、あの人の誕生日。  あの人の次に付き合った人の誕生日は、別れてすぐに、忘れた。  他の人の誕生日も、付き合い始めた記念日も。  365日の中に埋もれて、もう引っ張り出せなくなってる。  今でも。  あの人の誕生日だけは思い出せる。  あの人の誕生日だけが特別だってことは変わってないけど。  もう、薄れ始めてるのも、確か。  あの人の声も、笑顔も。  わたしの頭の中で、靄の向こうにいってしまった。  こうやって、いつか忘れていくのかもしれない。  でも。  悲しくはない。    
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