4人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………から」
黙ってても済ませてくれないことは分かってる。
だから。
渋々でも、わたしは答えなくちゃいけない。
乙女心の「お」の字も分からないような男に。
「え? 何?」
訊き返しながら、テーブルの上に置いておいたリモコンで、テレビの音量を下げたみたいで。
ぐっと静かになる、室内。
半分以上、自棄になった状態で。
「目が腫れて、一重になってるから。って言ったの!」
投げ遣りに。
もう、どうにでもなれ、というように。
吐き捨てた。
こういう状態だから会いたくなかったのに。
家に来るし。理由を聞き出そうとするし。
しかも。会いたくないってことは、知られたくないっていうのと同じ意味なんだってことくらい、分かってほしい。
いや、多分、わたしの口からはっきり、2、3回言っても、忠司には理解出来ないんだろうけど。
恥ずかしいのと情けないのとで、わたしの顔がぐりぐり更に膝にメリ込んでいくのを止めたのは。
「そんなことで……バカだねぇ。
犬とか、猫、可愛いじゃん。
一重でも」
的外れなのか、それとも直球ストライクなのか、いまいち判断しづらい……それでも、何だか最高だとわたしには思えた、忠司の言葉。
最初のコメントを投稿しよう!