恋人

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  「…………から」  黙ってても済ませてくれないことは分かってる。  だから。  渋々でも、わたしは答えなくちゃいけない。  乙女心の「お」の字も分からないような男に。 「え? 何?」  訊き返しながら、テーブルの上に置いておいたリモコンで、テレビの音量を下げたみたいで。  ぐっと静かになる、室内。  半分以上、自棄になった状態で。 「目が腫れて、一重になってるから。って言ったの!」  投げ遣りに。  もう、どうにでもなれ、というように。  吐き捨てた。  こういう状態だから会いたくなかったのに。  家に来るし。理由を聞き出そうとするし。  しかも。会いたくないってことは、知られたくないっていうのと同じ意味なんだってことくらい、分かってほしい。  いや、多分、わたしの口からはっきり、2、3回言っても、忠司には理解出来ないんだろうけど。  恥ずかしいのと情けないのとで、わたしの顔がぐりぐり更に膝にメリ込んでいくのを止めたのは。 「そんなことで……バカだねぇ。  犬とか、猫、可愛いじゃん。  一重でも」  的外れなのか、それとも直球ストライクなのか、いまいち判断しづらい……それでも、何だか最高だとわたしには思えた、忠司の言葉。  
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