満天の星

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満天の星

「今週は忙しかったから。  疲れてるから、また今度にしてくれない?」  時間は、午前1時40分。  友人と一緒に"いい雰囲気のバー"で2、3杯飲んで帰ってきた らしく、少し、声がでかい。  耳にあてていた携帯電話をそっと離しながら。  ふと、思い出す。  3日くらい前にも 友人と"美味しいビーフシチューを出す店"に行った とか言ってなかったっけ?  今週は忙しかったから、ね。 「朝から出掛けるでしょ?  起きる自信、ないもん」  スピーカーから聞こえてくる声には、申し訳なさのかけらも見当たらないけど。  ていうか、次の日は朝早いって分かってるなら飲みになんか行かなければいいだけで。  しかも、前日――いや、もう当日か――ドタキャン、何回目だろう。  言いたいことは、そりゃあ、山のようにあるけど。  それこそ、400字詰めの原稿用紙にギッチリ、5枚分くらい。 「いいよ、分かった」  出来るだけ優しく。穏やかに。  この2つを意識しながら、僕は言葉を吐き出す。  そういう人と分かっていて、付き合ってるんだから――いや、好きなんだから と言えば、ものすごく陳腐なんだけど、実際はその通りだし。  もちろん、悪気もなくドタキャンするところを許してるっていうんじゃなく、そこは嫌いなところとして挙げられる点なんだけど。  でも。それをカバーする長所だって充分にあるから、こうやって(渋々ながらも)許してもいいかなぁ、と思ってしまうわけで。  そんなことをつらつら考えながら。 「じゃ、また今度ね。  おやすみ」  彼女と繋がっていた携帯電話をテーブルに置いて。  ぽっかり空いてしまった今日1日で何をしようか――新しい靴でも買いにいこうかな なんて、布団に入る。    
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