わがままな王子様

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    「…!?」   反射的に香杞は目線を 地面へと逃げ動かす。   人として有り得ない 言葉に耳を疑った。   で…でももしかしたら 聞き間違いかもしれない…   香杞は呼吸を整えると もう一度少年を盗み見た。   「ひっ!」   目と目が合ってしまい、 あまりの恐ろしさに 今度は目を反らすことすら 出来なかった。   少年の顔はとんでもない くらいに変貌していたのだ。   例えるならば 鬼の形相。   目は異常なまでにつり上がり 光を浴びキラキラした瞳は 黒く濁って光はない。   眉と眉がくっついて しまうのではないかと いうくらい眉間にシワを寄せ、 こめかみには青筋がちらり。   そして何より凄まじい殺気。 今にも絞め殺されそうな…   香杞の体はその雰囲気を 先に察知したのか 気付くと後退りをしていた。   しかしそれに合わせて 少年は香杞の方へ足を進める。   「ななななんで…っ」   赤信号はそっちだったのに!   尋常じゃないくらいスピード違反だったのに! (多分80は余裕で出ていた。)   どうして私が怒られてるんだ! どうして私が!どうして私が!   香杞の頭の中では小さな分身が あーでもない、こーでもないと 会議をし始めている。   もっと逃げようと 後退りするが、ドンッと 背中に塀が当たる。   『これ以上後退りできません』   という合図だ。    
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