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キーンコーンカーンコーン…
「あれ?」
聞き覚えのある鐘の音。
急いで腕時計へ目を向ける。
時間を確認した
香杞の顔が一気に青ざめた。
時計の針は
8時20分を指している。
「ぴゃっっ…」
香杞の口から鳴き声にも
似た悲鳴がこぼれた。
香杞の通う学校、
櫛並高校は
20分から朝のHRが
始まるのだ。
その時間までに教室に
いないと遅刻扱いになる。
今教室はおろか学校の敷地
にすら入れていない
香杞はつまり…
遅刻決定。
というわけだ。
「なっ…なななな!」
言葉にならない声が漏れる。
高校二年生の登校初日にして
《遅刻を0に!》という
夢は儚く散った。
香杞は一回空を仰ぐと、
全身の力が抜けたのか
屍のようにだらんっと
その場に立ち尽くす。
「ち…こく…」
そんな中、少年は未だに
「謝れやガキ」や
「聞いてんのかチビ」と
香杞に罵声のシャワーを
浴びせ続けていた。
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