わがままな王子様

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    4月5日、8時05分。   学校付近の横断歩道まできたが 信号機が示すは運悪く赤。   ここの横断歩道は 一回赤になってしまうと 青に変わるまで時間がかかる。   「最っ悪…」   走って乱れた呼吸を調えながら 横断歩道の前で足を止めると 寒さでかじかんだ手に はあ…と、温かい息をかけた。     ― 十乃女 香杞(トオノメ カオルコ) 今日から高校二年生。   人よりやや小さめな身長に 結構整っている顔。 スタイルも悪くはない。   至って普通な女子高生。   変な癖っ毛でサイドが 垂れた犬の耳のように 跳ねているのが気になるが 腰元まで伸びたきちんと 手入れされているであろう サラサラな栗色の髪は 香杞の自慢だった。   そんな香杞に あえて人と違うところを あげてみろ。 と、言うならば   かなりの《遅刻魔》 ということだろう。    
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