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その時だった。
人生で忘れる事は絶っ対に
ないであろうこの出来事に
香杞は、
『数秒でもいいから
横断歩道を渡るのを
待てば良かった…!』
そう後悔することになる。
キキキキキキーッ!!
「なに!?」
大きな車のブレーキ音。
音がする方へ振り返ると、
一つの車が猛スピードで
こちらへと向かっていた。
止まる気配は、全くない。
「え…えぇ!?」
なななななんで車!?
今は車がいる方は
赤信号で反対側の
こちらが青信号のハズだ。
どうすればいいのか
わからないパニック状態。
逃げようと思い立った時には
もう距離が近すぎた。
ぶつかる!
香杞はぎゅっと目を瞑ると
手で顔を覆った。
…が
「…?」
ぶつかることはなかった。
車は止まっていたのだ。
ギリギリ、香杞の目の前で。
本当に止まったのかと
自分は生きているのかと
ちゃんと確認にするために
自分を必要以上にベタベタ触り
車をこれでもかという
くらいジィッと見る。
結果、
車は止まっており
自分はしっかり生きていた。
そう確信した瞬間
気が緩み、その場に
力無く座り込んでしまう。
体が 心臓が
ドクドクドクドクと
脈を打ち、うるさい。
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