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こいつは…この車は何だ!?
「私を殺す気かっ!」
誰かに恨まれるような
ことなんてしてないぞ私は!
…多分。
香杞は一言文句を
言ってやろうと立ち上がり
制服についた砂をはらうと、
車を睨みつけた。
よくみると
立派にリムジンなんか
乗っちゃっている。
それに気づいた香杞は何故か
もっと苛立ちが増した。
凡人故の妬みだろう。
香杞がまるでノラ猫のように
フーッと威嚇していると、
リムジンのエンジン音が
ゆっくりと止まった。
バタンという音に合わせて
後部座席の戸が開く。
香杞はそれを
待っていたかのよう
相手の姿が見える前に
「ちょっとあんたねぇ!」
怒鳴り声を上げ、覗き込む。
降りてきた相手と目が合う。
その瞬間、一秒…十秒。
…いや、もうそれは
数え切れないくらい
時が止まったのでは
ないかと思った。
「…え…」
…少なくとも私は
《こういう奴》は
漫画やアニメの世界だけの
存在だと思っていた。
しかし目の前にいるのだ。
その漫画やアニメの
世界にだけ存在する《奴》が。
そう、自分の目を
疑ってしまうほど…
美少年。
恐ろしい程に、美少年。
肌は透き通るかのように白く
それを引き立てる漆黒な髪。
癖っ毛なのか少し
ふわふわしている。
程良くつり上がった
切れ長な目に
青と黒の混合色な瞳。
吸い込まれてしまいそうな程
光を浴びて輝いている。
綺麗に通った鼻筋に
高身長でスッとした体。
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