29人が本棚に入れています
本棚に追加
ちょうどその時、スーパーの前を通った。そこでなおみは、自分の手料理を純二に食べてもらおうと思った。自分の腕を自慢したかったのだ。
なおみ
「そうだ。外食はやめて、私が作ってあげる」
純二は半信半疑に「作れるの?」というと、なおみは少し腹を立てて、
なおみ
「失礼ね。これでも一通りの事は出来ますよ~だ」
と、自慢する。
純二
「じゃぁ頼もうかな」
なおみ
「なに食べたい?」
純二
「そうだなぁ、カレーライス」
なおみ
「えーっ、そんなのでいいの?」
なおみはもっと手の込んだ料理を期待していた。
純二
「いいの。俺、カレーライス好きなんだ」
なおみ
「そう、じゃぁカレーライスでいいのね?じゃぁ買い物して行こうよ」
純二
「よし」
純二のアパート。2階の西の端の部屋で、6畳1間に台所、バス、トイレ付き、日当たりは良好である。
純二
「ごめん、今すっごく散らかってるんだ」
と言いながら、部屋の戸を開ける。すると、座敷は万年床、台所やテーブルの上は汚れた食器でいっぱい、ごみ箱はゴミで溢れかえっている。よくこんな部屋で生活していられるもんだと思えるほど散らかっていた。
なおみ
「わぁー、ほんと。…じゃぁ、ついでにこれも片付けちゃいましょう。竹本さんは外で待ってて」
純二
「俺も手伝うよ」
なおみ
「だめだめ、逆に邪魔だから。外で待ってて」
純二
「でも…」
なおみ
「早くぅ」
純二
「…わかったよ」
純二は部屋から追い出された。外ですることもなく、ふてくされて、少し怒って、入口のドアにもたれて待っていた。
純二
「なんでぃ、俺の部屋は俺が一番よく知っているのに」
なおみはまず、カレーの仕込みからして、煮込みながら掃除をし、手早く片付けていった。純二が外に追い出されてから30分が経った。
純二
「まだかなぁ。腹減った」
なおみ
「できたー!竹本さん、入ってきてもいいわよ」
純二
「やったー」
純二が部屋に入ると、そこは他人の部屋のようだった。
純二
「…すっげー、きれいになってる」
なおみ
「カレーも出来てるよ」
純二
「い、いただきます。…うまい!」
なおみ
「当然よ。市販のルー使ってるんだもん。サラダもあるからね」
最初のコメントを投稿しよう!