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純二はうまいのと空腹で夢中で食べた。
なおみ
「竹本さん、そんなに急いで食べると、体に悪いよ」
純二
「腹減ってるし、うまいし。こんなうまい夕食は久しぶりだ」
なおみ
「…」
純二
「どうしたんだよ」
なおみ
「なんでもない」
なおみは純二に恋人がいるかどうか気になっていた。いっそう思い切って聞こうと思った。
なおみ
「ねぇ、竹本さん。さっき、こんなうまい夕食は久しぶりだって言ったよね。前は誰に作ってもらったの?」
純二
「お袋だよ。…なんだよ、どうしたんだよ、さっきから」
純二はなおみの様子が変なのが気になる。
なおみ
「…うん。竹本さん、彼女いるのかなって思って…」
純二
「いないよ。いたら今日君とデートしてないよ」
なおみ
「…じゃ、私があなたの彼女に立候補していい?」
純二
「えっ?」
純二の驚いた顔を見て、なおみはふと我に返った。自分で自分の言ったことに気づき、必死に言い訳をする。
なおみ
「あっ、あのー、やだー、冗談よ、冗談。この間の仕返しよ」
純二
「…」
なおみ
「でも、時々夕食作ってあげてもいいよ」
純二
「…いいよ、ごちそうさま」
純二はスプーンを投げ置き、なおみの言った「冗談」という言葉が気に入らなかったためか、怒りながら言ってしまった。それは自分がなおみに好意を持っているからなのだが、本人も自分の気持ちに気づいていないから、なぜ腹が立ったのかわからないでいた。
なおみ
「怒ったの?」
純二
「別に…」
なおみ
「怒ったって事は、私に彼女になってほしいって事でしょ?ねぇ」
純二
「違うよ」
自分の気持ちに気づいていないから、思いきり否定する。
なおみ
「正直に言ってよ」
純二
「違うって言ってるだろ!」
なおみ
「!!」
なおみは純二の言葉にビクッとした。
ビクビクしているなおみを見て、純二も我に返った。
純二
「あっ、ごめん」
なおみ
「そ、そうよね。私なんか彼女になったら迷惑よね。わ、私帰るね。今日はどうもありがとう。さよなら」
なおみは慌てて飛び出して行った。アパートの階段を下りながら、しつこく問い詰めたので、純二に嫌われたと思い込んでいた。
純二
「お、おい、ちょっと待てよ。送って行くから」
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