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階段を下りているなおみの手を掴む。
なおみ
「離して!送ってくれなくていい!一人で帰れるから」
純二
「ダメだよ、女の子の一人歩きは…。もう暗いんだし」
なおみを落ち着かせようと、自分の方に引き寄せたとき、純二はなおみの目から大粒の涙がこぼれるのを見た。
純二
「なおみちゃん…」
なおみ
「いいの!私の事なんて放っといてよ!」
なおみは純二の手を振りほどいて階段を下りようとした。
しかし、純二が再びなおみの腕を掴み、きつく抱きしめて言った。
純二
「放っとけないよ。気になるんだ。…心配なんだ、君の事が」
なおみ
「えっ?」
純二
「いや、そのー、そう、署長の大事な娘さんだからね。送るよ」
なおみ
「う、うん」
自分が純二の彼女になりたいと言ったにも関わらず、冗談にしたため純二が怒った、と言うことは、純二は自分に好意を持っているのでは?と、なおみは気にしていた。でも純二もまた、なおみと同じような事を思っていた。
その事をずっと考えていたため、道中2人はなにも話さなかった。
なおみの家の前…。
なおみ
「どうもありがとう」
純二
「いや…、それじゃ」
なおみは純二とこのまま別れたくなかった。このままだと完全に嫌われると思い、謝ろうと思った。
なおみ
「あっ、あのー、さっきはごめんなさい」
深々と頭を下げた。
純二
「なおみちゃん…。俺の方こそごめん。(小声で)君の言った事が図星だったから、それを否定しようとしてカッとなって…」
なおみ
「えっ?今何て言ったの?」
純二
「い、いや、なんでもない。さぁお父さんが心配してるといけないから」
なおみ
「うん。ただいま」
良子
「おかえり。遅かったのね。夕飯は?」
なおみ
「竹本さんの家でカレーを作って食べた」
純二
「遅くまですみませんでした」
良子
「こちらこそありがとうございました。よかったら上がってお茶でも…」
純二
「ありがとうございます。でも、今日はここで失礼します」
なおみ
「私、そこまで送ってくる」
なおみは公園の入口まで純二を送った。
純二
「ここでいいよ。じゃ、おやすみ。カレー美味しかったよ。また作ってくれよな」
なおみ
「うん。今日はありがとう」
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