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すると、スラッと背の高い男性(純二)がなおみたちに気づき、逃げて行った男を追った。
しかし、マスク男は150m走った所でつまづき、呆気なく捕まった。
犯人を追った男性が鞄を取り戻して、なおみたちに駆け寄ってくる。
純二
「はい、どうぞ」
なおみ
「あ、ありがとうございました」
こずえ
「助かりました。本当にありがとうございました。」
純二
「いえ、仕事ですから。今日は非番だけど」
彼は城西署の刑事だった。
なおみ
「仕事って、ひょっとして刑事さん?」
純二
「ええ、城西署に勤めているんですが、今度転勤で…」
そこへ、目撃者の通報を受けて、警官2人が犯人を連行するためにやってきた。
警官
「あっ、竹本刑事、ご苦労様です。こいつですか?引ったくりは」
純二
「ああ、あとは頼んだよ」
警官
「はいっ」
それから、なおみたちの方へ向き直して、一言注意した。
純二
「君達、これからは気をつけるんだよ」
なおみ
「はいっ」
純二
「それじゃ!」
なおみは、自分では気がつかないうちに、純二に一目惚れしたようだった。このまま別れたくなかった。なんとか引き止めようと言葉を探したが、純二はもうすぐ人込みに消えようとしていた。なおみはこずえと一緒に行動している事も忘れ、必死に追い掛けた。
なおみ
「あ、あのー、お名前教えていただけますか?お礼…」
純二
「お礼なんていいよ。仕事だから」
なおみ
「でも…今日はお休みだったんでしょ?」
純二は困った顔をしていたが、なおみがそれに気づき、一礼をして純二に謝った。
なおみ
「あっ、ごめんなさい。困らせるつもりじゃなかったんです。すみません」
純二
「…いいよ。俺、竹本純二っていうんだ。それじゃ」
なおみ
「あ、ありがとう…」
この時なおみは、純二に対して運命的なものを感じた。
なおみに置いて行かれたこずえが、なおみを追い掛けてきた。
こずえ
「なおみ!なおみってば!」
なおみ
「えっ、なに?」
こずえ
「なにじゃないわよ。どうしたの?突然いなくなるんだもん」
なおみ
「ごめん、なんでもない」
なおみは、心の中で純二のかっこよさを見て、また会いたいと思い、いつまでも見送っていた。
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