29人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日、港署一係に新しい仲間が加わった。
藤本係長
「今日から一緒に働く事になった竹本だ」
純二
「竹本純二です。よろしく」
西田
「じゃぁ今夜は歓迎会ですね」
お祭り好きの西田は、全身で喜ぶ。
藤本
「署長に知らせておいてくれ」
西田
「はいっ、お嬢さんもですね」
藤本
「もちろんだ」
純二
「お嬢さん?」
岩崎
「署長の娘さんだよ。一人娘で目に入れても痛くないってくらい、署長は可愛がってるんだよ」
西田
「学校でも人気らしいから、手を出すと怖いぞ。実は俺も狙ってるんだけどね」
純二
「ふ~ん」
純二は興味なさそうに言った。
その頃、なおみは学校の帰りに、城西署へ向かっていた。純二にお礼を言いに行くためである。家庭科の調理実習の時間に、こっそり内緒で作ったクッキーを持って。なおみは地に足が付いてない状態で、危なっかしい。また純二に会えるのが、余程嬉しかったのだろう。今日のなおみは浮かれっぱなしである。
城西署の中は、重々しい空気が漂っていた。そんな中、なおみは勇気を振り絞って、受付の女性に声をかけ、純二の事を聞こうとした。
なおみ
「こ、こんにちは!」
受付
「はい」
なおみ
「あのー、こちらに竹本純二さんって…」
受付
「あっ、ごめんなさい。今日から転勤で…」
なおみ
「えー!そうですか。ありがとう」
あまりにもショックで、ろくに話しも聞かずに帰ってしまった。
受付
「あっ、ちょっと」
城西署に向かっている時とは正反対に足取りは重い。いつもの2、3倍の時間をかけて、やっと自宅にたどり着いた。
なおみ
「ただいま…」
良子
「おかえり。どうしたの?暗い顔して」
なおみ
「うん…。昨日の刑事さんにお礼を言いに行ったんだけど、転勤でもういなかった」
良子
「そう。残念だったわね。あっ、そうそう、パパから5時になったら署に来なさいって、電話あったわよ。なんでも新しい人が転勤で来るからって」
なおみ
「歓迎会だね?やったー!」
さっきまでのショックはどこへいったのか、なおみは一転元気になった。
夕方なおみは、純二に渡すつもりだったクッキーを持って港署に向かった。みんなで食べるつもりなのだ。
なおみ
「そうだ!あいつも誘ってやろう」
最初のコメントを投稿しよう!