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「…ありがとう、みんな…、おれは…」
「それ以上何も言ってくれるなよぃ」
「ああ、こうして会えただけで十分だ、エース」
迎えに来てくれた仲間たちが取り囲む様におれを抱きしめるが、それが返ってあるべき腕の不足を浮き彫りにしていく
いっそ、あの時ともに…
バッシャーン
闇へと囚われていきそうな思考を打ち破るかのように不意に挙がった大きな水飛沫
ずぶ濡れなのにも関わらず、まるで近所を散歩しているかのような顔で現れたその男はぞわりと鳥肌が立つようなただならぬ気配を纏っていた
「冥王レイリーっ…」
仲間に走る一瞬の緊張、焦りとも驚きともつかない表情を浮かべる面々をよそに
「あーっ、レイリーのおっさん!」
凍った空気をぶち壊す様なルフィの叫びが響き渡る
「やあ、ルフィ君、元気そうでよかったよ」
「おー、めしいっぱい食ったかんなー、もうだいじょーぶ」
間の抜けた会話に少しだけ緊張の糸が解れるが、仲間がルフィが口にしたそれは自身の苦い思いを呼び覚ますには十分過ぎるほどの名だった
「あんた…」
「ああ、君がロジャーの息子か」
どこか懐かしさを含む視線が苛立ちを掻き立てる
「おれのおやじは白ひげただ一人だ」
それを口にする時はいつでも誇らしさに満たされていたいのに、心が黒く塗りつぶされて行く
「エースはおれの兄ちゃん、それでじゅーぶん」
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