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「ん? 今、猫の声がしなかったか?」
「つまり猫の悪霊ね?」
「いや、普通の猫だろ?」
曲がり角を曲がり終えた。だがしかし、ここで少なくとも僕は曲がらずにそのまま引き返せばよかったと思った。
廊下の真ん中に『それ』はいた。
『それ』は『猫』でなければ『猫の悪霊』でもない。『猫の化け物』っていうわけでもない。
『人』だった。
いや『猫のような人』だった。
「よく猫耳少女はいわゆる萌えのジャンルに含まれるみたいだけどこの場合はどうなのかしらね?」
神方が悠長な質問を投げかけてきた。
僕達の目線の先にいるのは猫耳少女ではない。手足が猫の少女である。
女の子には似合わない、茶色い獣らしい猫の手足をしており、猫らしく四つん這いになって歩いている。
耳やしっぽやヒゲがないから猫と言えるのかはわからないが、ニャアと鳴いたからには猫だろう。
茶髪の短いツインテールが猫の耳を彷彿させる。
「僕は犬派だからわかんないや」
「白鳥君も犬っぽいものね」
「そこは否定させてもらおうか」
「ニャ?」
下らないやり取りをしている間に猫耳少女ならぬ猫少女はこっちの存在に気づいてしまった。
「話は通じるのかな?」
「無理そうね」
「ていうか無害なのか、有害なのか、大事なのはそこだよな?」
「フシャー!!」
恐ろしい表情で威嚇してきた。
「逃げるわよ」
「当たり前だ!」
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