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◇1◇
聖ヶ丘(ひじりがおか)学園高等部。某県某所、聖野(ひじりの)市に僕の通う学校は存在する。
名前からして神々しく思えるが、神も仏も関係ない。ごく普通の私立高校だ。
休み時間。
みんながわいわい話をしている中、僕は一人で本を読んでいた。
この学校に入学してはや一週間が経とうとしているが、人間関係に疎い僕に友達と呼べる人間は一人しかいない。
「白鳥 優(しらとり ゆう)君」
ふいに僕の名前が呼ばれ、顔をあげた。
僕の名前を呼んだのはクラス委員長、神方 ナギ(かみがた なぎ)だ。
背は平均的、顔立ちは良い方。髪は黒く、前髪は短く直線的に揃えられているが、後ろ髪は腰まで伸びていて歩く姿はまるで女神のようだと言われている。
容姿端麗。
頭脳明晰。
清廉潔白。
これらの言葉が神方にはよく似合う。
ごく普通の、僕みたいな男とは無縁であろう人物だ。
しかし、神方は僕の唯一の友達である。
「白鳥君、休み時間なんだから勉強せずに休憩しなさいよ」
神方は僕の前の空いている席に座った。
「勉強じゃない。読書だ」
「あら?授業中も読んでいたけど……」
「あぁそうですよ。授業もまともに受けずに読書に勤しんでましたよ」
「まぁどうでもいいわ。そんなこと」
本当にどうでもよさそうだった。
そこは委員長として注意するとこじゃないのか?
「それより白鳥君……」
凛とした表情で僕を見つめる神方。
「面白いこと、何かない?」
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