神方ナギの冒険

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「ない」 「あら? 即答なんていやらしいわ」 「いやいやいやらしい要素なんて一つもないだろう?」 「『いや』が二つ多いわ白鳥君」 「前の『いやいや』は否定の前置きだ!」 「ややややこしいわね」 「『少し』とか『ちょっと』とか、もっと言い方あったよな? お前の方がややこしいわ!」 「……やっぱり白鳥君は面白いわね」 僕のツッコミなんか露知らずにクスクスと神方は笑った。 神方は休み時間になる度に僕にこうやって面白いことを求めてくる。 かつては神方もその抜群の容姿からクラスメート(主に男子)の人気は高かったのだが次々と「あなたは面白くない」と斬っていったため、今では神方に話しかける人はいない。 まぁ僕は僕で面白いことを言っているつもりはないのだけれど。 容姿は抜群だったが性格に難あり。 神方の性格があと少し早くみんなに知られていたら、クラス委員にはなっていなかっただろう。 「あら白鳥君どうしたの? 欲求不満そうな顔してるじゃない?」 「欲求は余計だ!」 欲求不満そうな顔ってどんな顔だ!? 「欲求が余剰? さすが男の子ね」 「どうやったらそう聞こえるんだ!?」 「私の耳から入ってくる情報は面白くなるように歪曲されるのよ」 「なんとまぁ都合のいい頭をお持ちでございますね!」 「止めてよ。火照るじゃない?」 「褒めてないけど、せめて照れろ!欲求不満はお前じゃねぇか!」まぁ、その物言い顔は平然淡々としているのだけれども。 「あ、もうすぐ授業が始まるわね。そろそろ席に戻るわ」 「え? あ、おう」 毎回こんな感じ。僕のツッコミの消化不良で休み時間が終わる。 正直言って疲れるが嫌ではない。
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