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◇3◇
午後10時前。
僕が学校に着いた頃には神方が腰を降ろして待っていた。
「早いな」
「白鳥君が遅いだけよ。まぁ時間通りにきたから許してあげる」
と言って神方は立ち上がった。
「にしても親御さん、よく許したな。高校生の娘がこんな夜遅くに外出するのを」
「拘束するのに苦労したわ」
「強行突破!?」
「男子と夜の学校で面白いことしてくるって言ってきたから問題無いわよ」
「それは問題ありすぎるだろ」
僕が親なら全力で止める。いや、全力で止めようとした結果が拘束なのか。
「放任主義って憧れるわ」
「お前みたいなのを放っておいたら危なっかしくて敵わんわ」
「心配してくれるのね。ありがとう」
「会話の流れ的に心配の意味合いはないな」
強いて言うなら周りの人が心配。今の状況下だと僕が心配。
「でも大丈夫。私、防犯グッズとしてバールのようなものを常備してるから」
「見事に犯罪グッズだよ! 夜の校舎で何する気だ!」
「探索兼悪霊退治?」
「肝試しじゃなかったのか!? ていうか悪霊いるかどうかはさておき、そんなので退治できねぇよ」
「私のライク・ア・エクスカリバールを舐めないでちょうだい」
「かっこよく言ったところで結局まがい物じゃねぇか!」
エクスカリバール、のようなものだしな。
「塩と聖水を塗りたくったから大丈夫よ」
「JKが『聖水』って使うとみょ~ぅうにやらしく聞こえちゃうんだよねぇ~」
「え? 白鳥君? 引くわ」
「は? 僕は何も言ってないよ?」
僕のとは違う、男の声が一つ。
「こんばんわぁ~ん~高校生がこんな夜遅くにこんなとこにいるのはいただけないなぁ~」
その男は二人の背後に急に現れ、馴れ馴れしくも肩を組んできた。
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