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普段は古びた仏具や折れた武器などが無造作に放置されているだけで特に価値のなかった蔵。
だが、今日は違った。前述したようなガラクタがあったことは確かだが、その中に、一際異彩を放つモノがあった。
それは五つあった。
素槍、半弓、掛矢(大槌)、鎖分銅、そして少し長めの脇差。
「……?」
何と無く似つかわしくないような情景に首を傾げつつ、鳳我はまるで導かれるかのように脇差を手に取る。
そこには小さく丸められた紙が備え付けられていた。
鳳我は何の躊躇もなくその紙を手に取り、開く。そこには見慣れた字体で師の言葉が記されてあった。
「此れはかつての我が愛刀であり、銘を『朱雀』と申す物にて候。他にも『朱雀』の銘を持つ刀は多かれど、師が今手元に残すは此れのみにて候」
「……『朱雀』……」
文に書いてあることをそのまま復唱し、鳳我は『朱雀』に手をかけた。
師がかつて使っていた刀なら、恐らくはかなりの業物であるはず。
それだけの事実さえわかり、想像すれば、後にやることは決まっていた。
--その刀が如何程のモノか、この眼で見てみたい--!
半ば直感のように、鳳我の手は鞘と柄を握り締め、そして、一気に脇差『朱雀』を引き抜いた。
あらわになった鋼色の刀身が銀光を放つ。
--だがそれは一瞬にして、色を紅蓮へと変えた。
「--ッッ!?」
それを鳳我が認識すると同時に、その身を、そして魂を熱い何かが駆け抜けた。
新しい命が宿るような--その感覚は苦痛であり、恍惚であった。
「ううう……ああああっ!!」
その奇妙な感覚に耐え切れず、鳳我は開いた口から呻き、そして叫んだ。
それと同時に、灼熱は終わりを告げた。
「ううっ……はあっはっ……」
息も絶え絶えに鳳我はこの元凶であろう、『朱雀』を探そうと手探りで床を撫で回す。
だが、それは一向にしてない。
代わりに手に取った一枚の紙。その続きには、
「尚、そなたらの助けにと師の持つ精霊をそれぞれに宿したり、皆が皆、彼らと力を合わすことを願いたり」
とだけ記されていた。
(……もっと早く読みゃ良かったな……)
この瞬間より、鳳我の肉体は、魂は、『不死鳥』の精霊を宿していた。
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