A Crimson Kid

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精霊の契約を済ませて鳳我が本堂に戻った時、既に日は暮れ、辺りにはうっすらと宵闇が広がっていた。 精霊を宿してから暫くは些か倦怠感があり、それはその頃にも大方引きずっていた。 それにしても精霊とこのような形で契約を交わすとは当の本人も思ってはいなかったであろう。 契約--精霊を己が魂と一体化させることで、その恩恵を受ける儀式。 具体的にはそれの宿る武具--霊具を半霊体化させることで自由に召喚と収納を可能にする他、その精霊の持つ力の一部を霊具にも反映させることが出来る。その事実は、既に精霊を持っている仲間、天照陽子から知っていた。 だが、やはり己の魂を直に捧げる儀式だけあって、その疲労は並大抵のモノではい。後に知った話では、最も古く精霊を扱っていた人々は霊具ではなく直接その肉体を媒介にしていた為、より一層の消耗に襲われ、すべからく短命であったらしい。 だがその時はそんな事実は知る由もなく、鳳我は再び遺言書に眼を通した。その内容も、もう残りは僅かだった。 『最後に、そなたらのこれからについて、老婆心より些かの助言をさせて頂き候。更なる研鑽を求め、野に下るべし。だがもしそなたらに火急の事態起こりし時は、「玄武」という者を頼るべし。彼は我が友にて候。今は魔帝軍に下りてはいるものの、無双のますらおにて候。必ずやそなたらの助けに応じ、その力を貸し給えし候』 「……玄武……?」 思えば、鳳我達は師のことについては殆ど聞かされてはなかった。精々、彼らの親と魔帝軍に立ち向かい、赫炎流という武術流派の使い手ということしか。 そんな中で、初めて見た存在、「玄武」。そういえば師の愛刀は「朱雀」であった。これは何か繋がりがあるのではないか? --だが、その疑問は次の、最後の一文によって忽然と晴らされることとなる。 『繰り返し、そなたらをこの運命へと導きことを許せ。されど皆で力を合わせ、それを打ち破るを祈り、ここに筆を置くものにて候。尚、この書はすぐに焼き棄てるべし。 魔界四神・朱雀家前当主--朱雀守「昇羽」』 「魔界四神!? そんな……じゃあ、師匠は……」 その事実への驚愕に、思わず声が出る。 自らが尊敬していた師、それが憎むに憎んだ魔界のモノであったとは--。
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