A Crimson Kid

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「……やめなさいっ!」 だが、その緊迫は凜とした一声によって打ち消された。 その方向を見ると、長い金髪の少女--神風美月がこちらを真っすぐに見据えていた。 「私達は打倒メフィストフェレスの為に集った仲間の筈……ここでケンカしてる場合じゃないでしょう!」 華奢で、恐らくは年も彼らの中では幼い方の彼女であったが、なるほどその言葉は的を得ていた。 「オイオイ美月ィ! テメエコイツらを庇うってこたァ、もしかして脈アリかァ?」 「な……! そんな……」 「チッ……オイ行こうぜ蛟。何かシラけたしな」 蛟を連れ、獅堂は踵を返す。 その途中でマスターに、否、ここに居る全てに聞こえるように「俺は反対だからな……こんなザコ……」と呟きながら。 やがて二人は去り、ドアの閉まる無機質な音が響く。そのあとすぐに、美月は鳳我に詰め寄った。 「鳳我……あなたもあなたよ! あんな状況であんなこと……」 「……っせえ」 「……え?」 「うるせえってんだよ! あいつらが何言おうが、何て言い返そうが、勝手だろうが! 一々でしゃばんじゃねえよ!」 その言葉の意味それ以前に、その語勢に呆気に取られる美月を肩で押しのけ、鳳我も部屋を飛び出した。 その一連の様子を、マスターは無言で見つめていた。 「……私は……皆で力を合わせて欲しいだけなのに……どうして……」 鳳我と破牙兄弟が去り、部屋に残された美月は上擦った声で呟くと、拳を握り締めながら俯いた。 「……仕方ない」 「……?」 「君は皆で力を合わせてメフィストフェレスと闘いたいと思っている。だが彼は独りでも、いや独りで奴を殺そうと思っている。経験測の相違。一致する筈がない」 突然とかけられた言葉。顔を上げると、マスターの他に部屋に残っていた者--飛原龍司が抑揚のない声で答えていた。 そしてその言葉も、実の兄を他人行儀にも「彼」と呼ぶ辺りがまた冷え冷えとしていた。 言葉もなく、再び美月は俯く。その足元は数滴の雫で濡れていた。 (……まだ一丸となるは程遠いか……だがこれはあくまでも彼らの試練……儂が関わってはならぬ。彼らが主体的に乗り越えねばならぬ……) マスターはどこか物憂げな表情を浮かべつつ、心中で呟いた。 (儂も長くない……故にな)
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