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やがてマスターの下での修業が始まった。
ただ修業といっても、皆が皆統一された武技ではなく、それぞれが違ったモノをマスターより学んでいた。
同時に、それら多岐の武術を同等に高い水準で扱えるマスターの技量に彼らは驚かされた。尤も、それらの下地は『赫炎流』という総合実戦武術があったのだが。
やがて一年二年と時は過ぎ、彼らは着実にそれらを身につけていった。時には本物の魔物と闘い、実戦の経験を積んだこともあった。
特に剣術を学んだ鳳我の実力は芳しく、獅堂の初めの「ザコ」の評を吹き飛ばす程だった。
そして彼らがそれなのに強さの魔物とも渡り合えるようになった頃--彼らの下に一つの報がマスターによって伝えられた。
ムーンライト家の分家である、天原家が魔帝軍に襲撃され、一人娘であり、美月の従妹である鏡子が幽閉された、と。
「……彼女の母にして、美月、お主の叔母は我が戦友の一人。故に、彼女も我々が救い出したい。お主らの力を試すのにも良い機会じゃ。
……だが、あくまでも隠密に進めたい。故に、少人数……二、三人程募ろうと思う」
五人を集め、マスターは問う。心なしか顔色が良くないが、それを問う者は不思議といなかった。
「マスター、お言葉ですが」
「龍司か……何じゃ?」
静かに挙げた手を同じく静かに下ろし、龍司は眼鏡の位置を指で直しながら申し上げた。
「今回の件、複数と言わず、僕一人で事足りるかと」
あくまでも淡々に、しかし尊大とも取れる言葉を口にする。
「ハッ! 大した自信じゃねェかよ龍司!」
当然の如く入る横槍。それを当然の如く無視して、龍司は続けた。
「今回の相手は少なくとも今まで僕らが相手した魔物の中では弱い部類に入ります。少なくとも、隠密戦なら一人で事足りる。寧ろ人数を増やすと小回りが取れなくなる。隠密においては致命的だ。そして冷静な状況判断が不可欠……以上の理由より……」
「ふむ……お主の知力は存じておるが……これは救出戦でもある。失敗は許されん。それでも、お主一人でやれるのか?」
「ええ」
「そうか……なれば任せよう。決行は明晩じゃ」
果たして、龍司の言う通り、彼一人で全ては事足りた。
まるでマスターもこれを見通していたかのように。
かくして、彼らのもとに天原鏡子改め天照陽子が加わることになる。
そしてそれから近くして--
マスターはこの世を去った。
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