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懐に入り込むのが巧いヤツだと思う。
働くフロアは同じだが、仕事で接点があるわけでも無いのに、さあ帰ろうって時間になると、気がつけば隣に居るし。
今だって、何故だか俺の部屋で料理なんか始めちゃってる。
「お前さー、仮にも客だろ?なんで人んちの台所立ってんの?」
「それオレに聞くのー?
腹減ったっていうから作ってあげてるのに~。」
「そりゃ言ったけど…」
「どーせ不器用だからなんにも作れないでしょ?」
「ひとこと多い。つうか、わざわざ作らなくったって外出るか出前でいーじゃん。」
「もーそんなことばっか言って。外食ばっかじゃ体に良くないよ?お金も掛かるしさぁ。」
母親みたいなこと言うし。
仕事上がりが同じタイミングになると決まって俺を誘う。
週イチで呑むようになってから数週間も経たない内に、互いのマンションを行き来するようになり、そんな時は大抵コイツが作って食わせてくれる。なんでも中華屋の息子らしい。
俺と違って調理することに抵抗は無いみたいだ。
(汚すわ材料無駄にするわ、挙句失敗するので自分が台所に立ってもいいことは無いと悟ったのは随分と前だ。)
「ごはん炊けたよー。もう出来るからお茶碗出してね。」
「お、ちょーいい匂い。麻婆豆腐か」
「あとねー、サラダもあるよ!スープはインスタントだけど。」
「すげぇじゃん。俺ね、お前の麻婆豆腐好きだよ。」
「そ?オレもねー、先輩が食べてるトコ見るの好きー!」
敬語も取れて、ふたりの時はフランクに話しかけてくるようになってから、コイツの隣りは益々居心地がいい。
…それにしてもだ。
週に2~3日って頻繁過ぎやしないか?
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