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「お前なんで彼女居ないの?」 「なんでって、なにが?」 「だってお前モテるだろ。うちの課の女子にもすげー人気あるし。」 気配り出来るし、ユーモアのセンスもある。 先週末、洒落たレストランで食事しつつ疑問だった。いい店いろいろ知ってるのに、誘うのが俺じゃあ味気ないだろう。リサーチならいくらでも付き合うけど、そんな感じでもないし。浮いた話ひとつ聞かない。 「それ言うなら先輩だってモテモテじゃない。」 「んなことねえよ」 「えー?オレいつもハラハラしてるけどなー。手作りのお弁当なんかで胃袋掴まれたらどーしよーって。」 「だから、俺をなんだと、」 「一生懸命餌付けしてるの、気付いてなかった?」 「あのねえ…。」 どこまでが本気なのか。 いや全部冗談か。 「どんなコがタイプ?紹介してやるよ。」 「え、いいよ、要らない」 「実は何人か頼まれててさあ。セッティングしろって、うるせーの。お前がうちに顔出す度に言われるから…、ん?」 調子に乗って喋り過ぎたか、テーブル挟んだ向かいでなんだか浮かない顔してる。 「どうした?」 「…もしかして、オレの事めんどくさい?」 「は?」 「オレに構うのが面倒だから、彼女作れとか言うのかなって」 「え、違う違う、そうじゃなくて…!」 「違うの?」 「全然違うよ、ただ、なんでかなって気になっただけで…」 「そっか、良かった。」 「うん。」 ……なんか変だよなあ、このやり取り。 コイツに恋人が出来てしまえば、こんな風にしょっちゅうつるんだり出来なくなる…。 一瞬それが浮かんで寂しく思ってしまった。女々しいにも程がある。 「……ホントに気付いてないんだね。」 「え?なに」 「なんでもなーい。ほら、冷めないうちに食べよう?」 「ああ、…いただきます!」
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