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「いいか?始めるぞ」
藤塚駅前にあるマンションの一室。
神妙な顔をした未央が、千聖に向かって肯く。
「うん――」
小野寺未央は高校三年生の十七歳。
比較的小柄で、大きな瞳と少し気にしている大きめの口は何処か日本人離れしている。
肩の下まで伸ばした髪は茶色く、指で捩るだけで綺麗な癖が付く。
両親は未央がまだ幼い頃に他界し、二人目の父は一等航海士として世界中を渡り歩いていた。
性格の方はと言えば、明るく素直だがあまりよく考えないで行動するところがあった。
「すごくドキドキしてる。ねぇ……優しく教えてね、千聖」
少し甘えた声で告げて上目遣いで見た未央に、千聖は微笑んだ。
向坂千聖は二十二歳。
去年大学を卒業して、関東日報という新聞社に勤めている。
身長175センチ、体重62キロ。
一言で表せば、頭脳明晰で容姿端麗。
黒くサラサラとした髪と、どこか秘密めいた少し淋しげな瞳が魅力的で女性にもてる。
母は五年前、ある事件に巻き込まれて死亡し、宝石商の父も五年間行方不明の末、昨年の十二月に他界した。
性格は勝ち気で自己中心的。
そして、何事にも揺らがない固い意志を持っている。
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