373人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
「裕翔、余計なこと言うなよ」
「え?」
「特に光に」
「…う、うん」
悲痛なまでな伊野尾の微笑に心臓を抉られた気がした。
「薮くん、すきになってごめん」
ふわりと笑う高木の中にも悲痛を感じた。
ああ、引っ掻き回したのも壊したのも、こまらせているのも裏切り者も、ふたりじゃない。
本物の裏切り者は俺と光なのかもしれない。
「知念に、薮の部屋に行くように言っとくから今日は高木とふたりにさせて」
「わかった」
「行こう、高木」
並んで歩くふたりに恐怖を感じた。
ふたりの姿に責められているという被害妄想ばかりが浮かぶ。
(視界に入るだけで恐ろしくて愛しい仲間)
(願わくば死角の世界で暮らしておくれ)
おわり
最初のコメントを投稿しよう!