プロローグ

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――――現在。 ジー、ジー、ミーンミーン 「…………うるさいな」 ジー、ジージー、ミーンミーン、ジージー 「うるっさい! いい加減にしろ本っ当にうるさいなお前らは! ここはお前らの所有地じゃないぞ! 騒音罪で検挙してやろうか!?」 ミーンミーン、ミーンミーン、ジー、ジー 「誰でも『あぁ、セミはちょっとしか生きられなくて可哀想だなぁ』なんて言ってくれると思うなよ!? お前ら地中で何年も生きてんだろうが! なんでわざわざ1週間のためだけに出てくんだよ! そのまま土の中で生涯終えろや!」 ミーンミーン、ジー、ジーミーンミーンミー 「言ってやろうか? あー言ってやるともさ! 僕ぁな、僕ぁ夏になると同時に『俺達が主役ですよ』的な顔して騒ぎ立てるお前らが大っっっっ…… ……っ嫌いなんだよ!!」 ジー? ジー……ミーンミーンミィィー 「…………げほっ……」 暑いな……。 どうして夏ってのはこうも暑いんだろう。 口を開いたら「暑い」しか言葉が出てこない。 同窓会ってったって、なにもこんな真夏日にやらなくてもいいじゃないか。 日本には「春」とか「秋」とか、もっと手頃な季節があるだろう。 百歩譲って「冬」でもいいよ。 寒いほうが暑いのより2億倍いい。 四季折々が彩られるこの国で、最も淡白で忌まわしい季節だ。 僕はケータイに転送されてきた地図を見ながら、街を右往左往している。 なんだこの街は、構造が難解すぎるぞ。大体似たような建物が多すぎるんだよ。これだから都会ってやつは。 なんでこんなややこしい場所を選んだんだ。だから尚之のやつに任せるのは嫌だったんだよ。 伝ってきた汗を首にかけているタオルで乱暴に拭う。  
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