プロローグ

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それにしてもあいつらに会うのも……7年ぶりか。 7年後なんて特に区切りでもない中途半端な時期に同窓会を開こうなんて言い出すのも、尚之の適当さの表れである。 「あのこの小ホールって、どの辺ですかね」 最近では悪い癖もほとんど出なくなってきている。 初対面の人に道を聞くなんて朝飯前なのさ。 「あぁ、このホールなら駅のすぐ近くよ。ほら、あっちに三十分程真っ直ぐ歩いていけば着くわ」 おばさんは僕の後ろに続いている真っ直ぐな道を指差して言った。 あぁ、なるほど、僕にまた三十分かけて歩いてきた道を三十分かけて戻れと言うんだな? これも困ったウィークポイントである。 そう、僕は極度の方向音痴。極度は極度でも、極度のレベルが違う。 なんてったって僕は高校時代、最初の1学期を朝のチャイムまでに登校できたためしがない。 夏休みを棒に振って、なんども学校と家の間を往復し、やっと通学路を頭に叩き込んだんだ。 「ありがとうございます」 僕は踵を返して、再びさっきまで歩いていた道を歩き始める。 あぁ……別に泣きそうになんてなっていないさ。涙?これは汗だよ馬鹿。
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