プロローグ

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三十分を早足で歩き、ホールの前に到着した頃には身体中汗だくになっていた。 普段運動してないのが祟ったな。 ホールの横には僕が一時間前に降りた駅。 ……だからこれは汗だって言ってるだろう! 自動ドアが開き建物の中に入ると、よく効いたクーラーの冷風が僕の体を包み込む。 あぁ、やっぱり夏はこうでなきゃ。 クーラーの効いた部屋でアイスクリームを食べながら延々とゴロゴロする。 それが正しい日本の夏の乗り切り方だと思う。 「ご予約の方ですか?」 クーラーの風を感じて涼んでその場から動かない僕を見かねてか、受付のお姉さんが声をかけてくる。 「あ、はい。えーっと……たんぽぽ荘の……」 「ああ、はい、承っております。あちらの階段を上って、第3小ホールの方へどうぞ」 受付のお姉さんに施された通り、僕は上品な絨毯が敷かれた階段を上って行く。 尚之のやつ、一丁前に結構いい所借りたんだな。 そんなことを思いながら歩いていると、『第3小ホール』と書かれた表札の部屋の前に到着した。 軽く深呼吸する。 なにしろ連中に会うのは七年ぶりだからな。七年は大きいよ、七年は。 いくら近しい間柄だからと言って、少しは心の準備というものも必要になってくる。 ……あいつらに会うのに緊張しなきゃいけないなんてな、馬鹿ばかしい。 僕はドアを開けようと、絢爛なドアノブに手をかけた。
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