マリーダ・クルス

3/3
前へ
/3ページ
次へ
「あぁ、わかってるよマリーダさん。 ちょっと一服してただけだ」 俺が手に持っている煙草を見せると、マリーダは少し嫌な顔をする。 「…煙草は体に悪いから止めろと、お前が入隊したときから言っているだろう。 確かにお前自身の体だからそれ以上は言わないが、戦闘に支障をきたされても困るんだからな」 「はいはい…、分かりましたよ…」 俺が適当に返事をして煙草を灰皿に押しつける動作を見たマリーダは、「もういい」とだけ呟き、格納庫に向かう。 いつもの事だから、恐らく呆れているんだろう。 マリーダの姿が見えなくなる前に、俺はマリーダの後ろに着いていく。 「んで。今回は何の任務?」 「連邦軍の偵察部隊と思われる二機をレーダーが捉えた。 その二機に対して牽制をかけるらしい」 手元の携帯端末を確認しながらマリーダが淡々とそう俺に伝える。 前からだが、マリーダは普段こそ優しいが、いざ仕事となると人が変わってしまうのだ。 「んで、そいつを片付ければいいと?」 「いいや、あくまでも牽制だ。撃墜までする必要はない。こちらも十分な戦力はないのだからな」 「そいつは誰の判断で?」 「…マスターの判断だ」 彼女がマスターと呼ぶ人物はこの艦ではたった一人、艦長のジンネマンだけだ。 あまり深いことは知らないが、彼女も話したがらないので知る必要もないだろう。 「あ~あ、んじゃまさっさと終わらせて、マリーダさんとイチャイチャしようっかなぁ~」 「無駄口を叩くな、早く行くぞ」 と、口では言いつつ顔を少し赤く染めるマリーダ。 俺に見えないようにしているのが、とても可愛い。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加