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「あぁ、わかってるよマリーダさん。
ちょっと一服してただけだ」
俺が手に持っている煙草を見せると、マリーダは少し嫌な顔をする。
「…煙草は体に悪いから止めろと、お前が入隊したときから言っているだろう。
確かにお前自身の体だからそれ以上は言わないが、戦闘に支障をきたされても困るんだからな」
「はいはい…、分かりましたよ…」
俺が適当に返事をして煙草を灰皿に押しつける動作を見たマリーダは、「もういい」とだけ呟き、格納庫に向かう。
いつもの事だから、恐らく呆れているんだろう。
マリーダの姿が見えなくなる前に、俺はマリーダの後ろに着いていく。
「んで。今回は何の任務?」
「連邦軍の偵察部隊と思われる二機をレーダーが捉えた。
その二機に対して牽制をかけるらしい」
手元の携帯端末を確認しながらマリーダが淡々とそう俺に伝える。
前からだが、マリーダは普段こそ優しいが、いざ仕事となると人が変わってしまうのだ。
「んで、そいつを片付ければいいと?」
「いいや、あくまでも牽制だ。撃墜までする必要はない。こちらも十分な戦力はないのだからな」
「そいつは誰の判断で?」
「…マスターの判断だ」
彼女がマスターと呼ぶ人物はこの艦ではたった一人、艦長のジンネマンだけだ。
あまり深いことは知らないが、彼女も話したがらないので知る必要もないだろう。
「あ~あ、んじゃまさっさと終わらせて、マリーダさんとイチャイチャしようっかなぁ~」
「無駄口を叩くな、早く行くぞ」
と、口では言いつつ顔を少し赤く染めるマリーダ。
俺に見えないようにしているのが、とても可愛い。
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