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「用がないなら失礼する」
「あ……、ま、待って!」
戻ろうとする朝霞に、私は慌てて呼びかけた。朝霞は半身だけ振り返って私を見ている。
「あのっ、私、私……」
なんて言ったらいいんだろう。いつもお店では口説かれる側だった。
男の人に本当の気持ちを言うなんて、今までしたことない。だけど、早く何か言わないと行ってしまう。
「私っ、バージンだからっ!」
ロビー中に響き渡る声だった。皆が私を振り返る。だけどそんなこと、今の私は気づかなかった。
「ホントよ。誰とでもあんなことしないわ。あの……あの人には無理やりされて……。だから、私は……、あなたが……!」
「おいで」
朝霞が私の口をふさぐようにして引き寄せ、ロビーから連れ出した。
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