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 開いた携帯を片手に、由香は放心状態に陥っていた。 ディスプレイに映る華やかなメール文が、何を表しているのか、理解出来ない。 いや、本当はわかっている。 ただ、受け入れきれないだけだ。    浴室のドアが開く音が聞こえ、由香は慌てて携帯を閉じた。 クイーンサイズのベットサイドには、武志が脱ぎ散らかしたジーンズがある。 そのポケットに素早く携帯を捩込むと、掛け布団を首までスッポリと被った。 つい十分前まで火照っていた裸体は、すでに冷めている。  ワンルームと廊下を隔てているドアが開いた。 ふぅー、と大きく息をつきながら、武志が入ってくる。 半裸で、短い髪がまだ湿っていた。 武志は土木会社に勤務している。 焼けた肌、細身の体にしっかりとついた筋肉は、由香の愛すべき肉体だったが、いまはそんなものに胸をときめかしている余裕はない。  
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